これまでの研究経過
約10年前から、京都の老舗や長寿ファミリー企業を対象に事業承継やイノベーションを研究してきました。京都だけでなく、東京・日本橋や金沢、イタリアなどで、長寿ファミリー企業などへのヒアリングも実施しました。また、センター長である辻田は、中国・温州出身の移民企業家を調査し、欧州諸国を拠点とする彼らが中国の他地域や他国からの移民を圧倒する経済的成功を手にしている要因をコミュニティー・キャピタルやネットワークの視点から分析してきました。さらに、そこで得た知見や分析アプローチをベースに、近江商人やトヨタ自動車のサプライチェーンといった時代や産業が異なるコミュニティーを考察しています。
「老舗、長寿ファミリー企業、イノベーション」と「移民起業家、コミュニティー・キャピタル、ネットワーク」という2つの研究はこれまで独立していましたが、得た知見の妥当性や普遍性を検討する中で、長寿ファミリー企業研究にコミュニティー・キャピタルやネットワークの視座を導入するという本研究が生まれた。特定地域で長きにわたって事業を続ける長寿ファミリー企業は地域社会に埋め込まれた存在であり、コミュニテイーのメンバー同士の信頼関係やネットワーク構造のありようが、その長寿性を規定しうるとの仮説を立てています。